「狩猟免許を取る」と決意したのはこの冬でした。狩猟免許と一言で言っても,網・罠・銃と種類がありますが,僕が取得しようと思っているのは罠です。ではなぜ狩猟免許をとるのか...
1,「命」を受け止めたい
食事の前には「いただきます」と言います。これは食べ物があることへの感謝,食材を提供してくれた人たちへの感謝,そして今から食べる命への感謝だと思っています。
大学生時代の教員養成の授業の中で,鶏を育てて殺して食べるという実践について考えるという時間があったこと。また別の授業の中では講師の先生の過去の実践で,食べるために豚を育ててそれを本当に殺すかどうかについて子どもたちと時間をかけて話し合ったという教育実践を,映像をとともに教えていただいたこと。ほかの授業はあまり覚えていませんが(-_-;)
実際に子どもたちの「いただきます」を見ていると,何となく軽いなぁと思って,命をいただくことの重さをどうすれば伝えられるかなと考えてきました。
そんなころに観たテレビ番組「素敵な宇宙船 地球号」の中で,鉄砲猟師・罠猟師の方がシカやイノシシを捕って肉にして食べるという命のやり取りが扱われていました。猟師が何をしているかという実態に触れたのはこれが初めてでした。
こんな経緯で,自分の中で「自分でとった命を自分で食べるってことは大事なんじゃないだろうか」という考えが固まってきたと思います。
実際「今の子どもたちは,魚は切り身のまま海を泳いでると思っている子もいる。」という話を聞いたこともあります。人間が食べている物は,人間の手で殺され,加工されて,スーパーに並んでいるということ。「殺す」という行為に嫌悪感を抱くのは当然のことだと思うのですが,その重みを受け止めた責任が「いただきます」にはこもっていないといけないんじゃないか,そう思うようになってきました。
とはいえ,僕は実際には何もしなかったんです。鶏を殺して食べることくらいならできたんじゃないかなとは思うのですが,やっぱり人が殺してくれて,加工してくれている「肉」の方が手軽なんですよね。そこに甘えてしまっている自分がいます。
2,里山
僕の生まれ育ったところは山のふもとの新興住宅地。小学生の頃の遊びの大半は山と川。一日中遊んでいました。喉が乾いたら家に帰ってお茶を飲んでまたすぐに出発。小さな山だったので親と一緒に犬の散歩で頂上まで登ることもありましたし,川も小さくて危険もなかったので自由に遊ばせてもらいました。カブトムシ,クワガタ,サワガニ,ホタル…。たくさんの生き物と自然が遊び相手でした。一度だけイノシシに遭遇したことがあります。山に登って峠で休んでいるときに,子連れのイノシシが30mほど前を通り過ぎていきました。ただ,不思議とその自然物を食べるということはありませんでした。むかごやサワガニ,イタドリ,ゴリなど食べておけばよかったなと思っています。
大学のゼミは理科教育。先輩や教授に付いて回って野山の動物のフィールドサインを探しました。シカやイノシシの足跡,クマ剥ぎ,タヌキの溜め糞などはその時に教えてもらいました。幼少期に何気なく見ていたものばかりだったのですぐに見分けがつくようになり,先輩たちに驚かれていたのを覚えています。
自分に子どもができてから,子どものおもちゃ作りのために竹をとりに山に入りました。自宅から100mほどのところにヌタ場を発見し,たくさんの足跡がついているのが確認できました。こんな近くにシカやイノシシが出てきているんだなと思いました。そういう目で辺りを見てみると,あちらこちらにイノシシが掘り返した跡がありました。近いところでは自宅から40mほど。
また,カブトムシ捕りを大人になってから再開しました。結構はまってしまって,一時期は毎晩あちこちのポイントを見て回っていました。真っ暗な山に入っていく気味悪さと,獲物を見つけた時の喜びとが非常に刺激的で,新しいポイントの開拓に一生懸命でした。ある時山に入るとたくさんの光る眼がこちらを見ているのです。シカの群れでした。民家からすぐ近くにこんなにたくさんのシカが降りてきているのだなと思いました。
自分の子どもが冬休みで運動不足なので,家の前の山に登りました。足跡,糞,ヌタ場,泥を擦り付けた跡,樹の皮を剥いで食べた跡など,そこらじゅうにありました。ある沢ではシカ1頭分の骨も見つかりました。
こんなことから,自分の生活のすぐそばににシカやイノシシを感じています。ちょっと世界を広げれば,「狩猟」というものはとても身近なものなんじゃないかと思っています。
3,狩猟ブログ
ニュースアプリで偶然出会った狩猟ブログ。面白くていろいろな人の狩猟ブログを読んでみました。野生動物による農作物の被害が増えていることや猟師の数が減っていること,イノシシやシカの肉の人気が高まってきていること,鳥獣駆除で殺す場面もあればおいしい肉のために生け捕りにして絞める人もいるということなど,狩猟への世界が広がりました。
動画共有サイトで実際の狩猟の様子や解体の様子も見ました。中には批判のコメントもありましたが,僕の中では否定的に捉える部分はほとんどありませんでした。
獲物を追い詰めることや殺すことへの喜びは,僕なら感じないのかなと思います。「食べるために捕る」って感じですね。逆に,躊躇ってなかなか殺せないとか,涙があふれてしまうとかいうことも無いと思います。でも実際にはやってみないと分からないっていうところだと思います。
細かいことを書けば,アウトドアが好きとか,燻製作りを楽しんでいるとか,ほかにも理由がありますが,狩猟免許をとると決めた理由の大きいものは以上です。
夏の免許取得に向けてぼちぼち頑張っていこうと思います。